「カルテがない」と言われても諦めないで!障害年金申請で『初診日』を証明するための対処法と代替資料
はじめに:病院のカルテ保存期間は「5年」の壁がある
「障害年金を申請しようと思い、昔通っていた病院に問い合わせたら『もうカルテが残っていない』と言われた……」
当事務所には、このようなご相談が数多く寄せられます。実は、医師法によってカルテ(診療録)の保存期間は「5年間」と定められています。そのため、初診から長い年月が経ってから障害年金を申請しようとした際、肝心の証明書(受診状況等証明書)が取れないケースは決して珍しくありません。
しかし、結論から申し上げますと、カルテがないからといって、障害年金の受給をすぐに諦める必要はありません。
今回は、カルテが破棄されていたり、病院が廃院していたりする場合に、どのようにして「初診日」を証明すればよいのか、その具体的な対処法を解説します。
なぜ障害年金で「初診日」の証明が絶対に必要なのか
そもそも、なぜこれほどまでに「初診日」が重要視されるのでしょうか。それは、初診日がいつであるかによって、以下の重要なポイントが決まるからです。
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納付要件: 初診日の時点で、年金保険料をきちんと納めていたか。
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加入制度: 初診日に加入していたのは「国民年金」か「厚生年金」か(これによって受け取れる金額が大きく変わります)。
つまり、初診日が確定しない限り、どんなに現在の障害の状態が重くても、年金の審査の土俵に乗ることすらできないのです。これが「初診日の壁」と呼ばれるものです。
ケース別:カルテがない場合の主な理由
カルテが入手できないケースは主に以下の2つです。
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保存義務期間(5年)が経過し、破棄された 大きな病院ほど保管スペースの問題から、期限が過ぎると定期的に破棄する傾向があります。
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病院自体が廃院・閉院してしまった 個人病院などが閉院し、連絡がつかなくなっているケースです。
どちらの場合も、病院側からの正規の証明書(受診状況等証明書)は発行されません。そこで重要になるのが、「カルテに代わる客観的な証拠」を集めることです。
カルテ以外で「初診日」を証明する7つの有力な資料
年金事務所は、カルテ以外の資料でも、客観的に初診日を特定できると判断されれば認めてくれる可能性があります。ご自宅に以下のようなものが残っていないか、徹底的に探してみましょう。
【初診日証明の手がかりとなる資料リスト】
診察券: 初診の日付が印字されているものがあれば有力な証拠になります。
お薬手帳・薬剤情報提供書: 処方された日付や病院名が記載されています。
領収書・明細書: 治療費を支払った際の日付が入った領収書。
母子健康手帳: 先天性の疾患や、発達障害などの場合、発育の記録が重要視されます。
健康診断の結果票: 病院に行くきっかけとなった異常値の指摘や、「要精密検査」の記載があるもの。
生命保険・共済の給付申請時の書類: 過去に保険金を請求した際、診断書のコピーなどを保険会社が保管していることがあります。
家計簿・日記: 病院名や通院した事実が具体的に記載されていれば、参考資料として扱われることがあります。
これら一つ一つは小さな証拠かもしれませんが、組み合わせることで事実を証明できることがあります。
それでも証拠がない時の切り札「第三者証明」とは?
上記の資料も全く見つからない場合、「初診日に関する第三者からの申立書(第三者証明)」という方法があります。
これは、当時のあなたの通院状況を知っている第三者(友人、同僚、隣人、民生委員など)2名以上に、「確かに〇〇さんは、平成〇年頃に△△病院に通院していました」という証言を書いてもらうものです。
ただし、ただ書いてもらえば良いわけではなく、信憑性を高めるために、当時の状況を具体的かつ整合性のある内容で作成する必要があります。これは非常にテクニカルな部分であり、専門的な知識がないと認められないケースも多いため注意が必要です。
専門家に依頼するメリット:記憶と記録を繋ぎ合わせるプロの技
「カルテがない」という状況での障害年金申請は、通常よりも難易度が格段に上がります。ご自身で動いても、「証拠不十分」として却下されてしまうリスクが高いのが現実です。
私たち社会保険労務士は、以下のようなアプローチでサポートを行います。
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資料の掘り起こし: ご本人も忘れていたような関連資料を探すアドバイスを行います。
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医療機関への照会: 転院先の病院のカルテに、紹介状や前医の記録が残っていないか等、独自の視点で調査します。
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申立書の作成: わずかな証拠を繋ぎ合わせ、論理的に「初診日はここである」と主張する申立書を作成します。
おわりに
「カルテがないから無理だ」と諦めてしまう前に、まずは一度ご相談ください。 古い診察券一枚、あるいは当時のご友人の証言が、あなたの将来を支える年金受給への鍵になるかもしれません。
当事務所では、初診日の証明が難しい案件についても多数の実績がございます。「自分の場合はどうだろう?」と迷われたら、まずは無料相談をご利用ください。